Chouette Ange

観劇記と好きなひとたちについて

ミュージカル「ベートーヴェン」

12/24(日)12:00公演 GC列サイドにて観劇。

ミュージカルスター揃いのキャスト、東京公演の期間は短い上にお目当ての海宝さんは東京公演のみ…ということで観るのあきらめようかと思うくらいチケ難でしたが、なんとかチケットgetして行ってきました。

贔屓の退団公演がfff(ベートーヴェンが主人公の作品)で、どうしてもそちらがわたしにとって親なので(何度も観たし…)比べてしまう部分もあるかと思いますが悪しからず。
ネタバレします!

 

●全体像について
初日あけたあたりの感想でベートーヴェンの生涯ではなく、生涯の中で見つけた愛の物語だというのを見ていたので、そこはなるほど確かに、と思ったのですが、冒頭とラストがベートーヴェンのお葬式なので、冒頭があれだと生涯がみれると思ってしまうんじゃないかな~と…。
史実をなぞっている部分もあるかと思うのですがトニとの恋愛パートを膨らませているあまり、ベートーヴェンの音楽家としての部分が中途半端になっているような感じがしてしまいました。恋愛に振り切るならそれでもいいんだけど、ラストで”不滅の音楽!”とたたえられるとそんなにベートーヴェンの音楽家としての部分フューチャーされてたっけ…?となってしまって。
これは私自身の問題なのですが、そもそも不倫ものにそこまで感情移入できず、かと言ってトニの夫がかなりの典型的モラハラ夫でそちらも結構くるものがあり。あの夫じゃそりゃわかるけど、でも子供も愛も手に入れられるってそんな都合のいいことはないよね…?等と思ってしまい、感情移入できずに終わってしまいました。(リアリストすぎる?笑)

ベートーヴェンの人生の切り取り方ってむずかしいなと思いました。難聴という有名すぎるエピソード、気難しいという印象、結婚はしておらず様々な女性との恋愛模様
だからこそ、恋愛至上主義の宝塚では特定の女性との恋愛模様ではなく、『不幸(難聴、他社との確執等)=運命を受け入れ、愛し、達した先が歓喜を歌うこと』でその不幸こそが相手役の謎の女(真彩ちゃん)にしていました。
fffと今回のベートーヴェンの主な登場人物が主人公以外ひとりもかぶっていないところにもベートーヴェンの人生の濃さが表れているんじゃないかなと思いましたね。というか、かぶっているエピソードとしては父親からの虐待と難聴が原因でコンサートを失敗してしまったところくらいではなかろうか…。
fffが愛した人たちからの裏切りや父親からの虐待ゆえのベートーヴェンの孤独、音楽家としての挫折や葛藤、ナポレオンやゲーテへの憧れ(思想的な部分)とかなり描きこんでいたので、それと比べてしまうとどうしても薄っぺらい物語で楽曲ばかり壮大で間延びしてしまう感じがありました。

今回のベートーヴェンは恋に落ちた女性はトニのみで孤独なベートーヴェンがトニに出会ったことで癒され愛を知った…という描き方でしたが、ほかの女性とのエピソード(初恋が実らなかったとか貴族との身分差で結婚を反対されたとか)を交えて、よりトニとの恋愛との差を描いた方が深みが出たのではないのかなあと思いました。

すみません辛口&比べてばかりで。こうなると中村倫也さん版のルードヴィヒも観てみたかったな~。あの公演もチケ難だったんですよね。

 

●音楽
音楽はさすが難曲ばかりで、でもベートーヴェンの旋律も取り込んでいて聴きなじみのある曲ばかりでおもしろかったです。
ただ、一度だけの観劇だと歌詞が耳をすべっていきます…。言っていることはなんとなくわかるけど残る歌詞はあまりない感じ…。(わたしの集中力の問題だったらすみません)
結局観劇後残っているのはベートーヴェンの旋律でした…。『悲愴』の有名なあの旋律が一番残っているという。普段から聴きなじみがあるのもあるけど、それこそベートーヴェンが偉大な音楽家である何よりの証なのかもしれない等と思いました。
ただ、う~ん。ベートーヴェンとトニの恋愛のテーマ的な音楽は『悲愴』なのかと思うのですが、終盤でトニへ生きていてほしいと伝えてこれからは歓喜の歌を作る!(=第九だよね?)と言っていたり、そのあとカスパールとの和解あたりも第九を作曲中なんだと思ったんですが…最後まで『悲愴』だったのでそのあたりがちょっと……。
史実的にはルートヴィヒよりカスパールの方が早く亡くなっているんですよね。冒頭とラストにカスパールがいないところを見るとそのあたり忠実ではあるけど、歓喜の歌を作るってもっと晩年だし…。もっと言うと悲愴はベートーヴェンがトニと出会うよりもっと前に作曲しているはず。
まあ、わたしもものすごくクラシックにくわしいというわけでもないので、間違えているところがあればすみません……。

 

●キャスト

主演のお二人の井上芳雄さん(ベートーヴェン)、花總まりさん(トニ)は出ずっぱりで難曲もたくさんですごかったです。
トニは一歩間違うと奔放に見えてしまう(いくら夫があれでも…)と思うんですが、お花様の繊細な感情表現がなければもっと感情移入しにくい女性像になっていたような…。
しかしこの二つの役こそ役替わりが良かったのではと思います。Wキャストで役替わりでも客席埋まると思うけどな。

2番手的な立ち位置はベートーヴェンの弟・カスパール。(私が観たのは海宝直人さん/小野田さんと役替わり)
弟~な素直で人懐こくて芳雄さんへ兄さん!兄さん!と大型犬のような海宝さんは私が今まで観てきた中だとありそうでなかったので、そのあたりは観れて良かったです!
まあ、あんなに結婚に反対していたのに、俺も愛を知ったよ!ごめん!!!ってなって和解するところは脚本うっすーーーーとなりましたが(笑)あの脚本で泣くお芝居できる海宝さんすごいよ……。
しかし、海宝さんも観れてないけど恐らく小野田くんもこの役は役不足ではないかい?新進のミュージカルスターというか出世役みたいな枠でもいいかなと思う。
大ナンバーがあるわけでもなく、2幕なんて最後5~10分くらいしか出番ないので何とももったいない使い方だなあと思いました。

カスパールの妻・ヨハンナはみりおん。(実咲凛音さん)
久々のみりおん。海宝さんとの並びがとてもかわいかったです!ドレスとか髪型が娘役っぽくてかわいくて癒された。
ベートーヴェンが耳にしていた悪評は本当なんだろうけど、あのナンバーひとつで(おそらくスリをしている?)表すのはいくらみりおんが上手かろうが厳しくないか…?しかもこのナンバーのとき海宝さんも反対の立ち位置にいたので最初オペラしていて気づかず…。みりおんも役不足と感じたな、、うちのみりおんもっとできる子なんですけど!!っていう気持ちでした(笑)実はすごい悪女でした~みたいな展開があるのかと思った。(史実ではベートーヴェンと息子の親権をめぐって壮絶なバトルをするんですよね)

トニの義妹・ベッティーナは木下晴香ちゃん。
晴香ちゃんはアーニャが本当に良くて楽しみにしていました!ドレス姿が美しくて、お花様と並ぶ姿はまぶしすぎました。お転婆でロマンティックな若い娘というのがとても似合っていました。
が、この役も脚本の書き込みが甘すぎませんか???お兄さんの不倫に対しては「気まずくて…」というだけでトニに言っていないのに、ベートーヴェンとトニのことはお兄さんに伝える上に裏切るって、その背景が見えなすぎて。裏切った後もなんで裏切ったかとか何もなくそのままフェードアウトという…。これじゃ役者さんがかわいそう。この役も完全に役不足

トニの夫・フランツは坂元健児さんはすーごい絵にかいたようなモラハラ夫でした。この役もめちゃくちゃ歌い上げる。(1幕ほとんど出番ないけど…)温厚な印象のシュガーさんがどういう風に演じるのか気になるな~。
弁護士の渡辺大輔さんはやっぱりクセのある役がうまかった(笑)
アンサンブルはムラムラ、大月さゆちゃんをみてました!アンサンブルも大活躍。なっちゃんのナース姿はソルフェリーノを思い出しました。
音楽の精霊たちはダンスだけかと思っていたら歌いだしてびっくりしました(笑)この人たちもなにか意味があるんだと思うんだけど、よくわからず終わっちゃったな…。

 

きっと何度か観ればもっと自分の感想も変わるんだろうなと思うのですが、いかんせんチケットが高い…。配信もアーカイブあるとはいえ高くないですか(小声)
海宝さんの見せ場がもっとあれば行きたい見たいと思っていたかもしれませんが…。
再演があるならもっと脚本のブラッシュアップがあれば…と思いますが、脚本は韓国のものをそのまま持ってきているんですよね。それだと厳しいのかなあ。衣装は日本オリジナルとのことでめちゃくちゃ良かったですね!ドレスがきれいでした。

東京はもうすぐ千秋楽ですが、これから全国を回るので無事にすべての公演が終わりますように願っております。