Chouette Ange

観劇記と好きなひとたちについて

ミュージカル「イザボー」

1/15(月)18:30公演 1階後方下手
1/20(土)17:30公演 3階前方センター
1/21(日)12:30公演 2階後方センターブロック
1/25(木)18:30公演 1階中頃下手
1/29(月)18:30公演 1階中頃センターブロック

イザボー東京千秋楽おめでとうございます!
今回、遠征はがまんするのでわたしは前楽がmy楽でした。
1度スウィングの登板はあったものの、プリンシバルキャストは歌も多く体力も気力も使いまくる(と察する)作品をよくぞシングルでやり遂げたなあと思います。みなさま本当にお疲れさまでした。
大阪も無事に最後まで公演できることを願っております。

my楽を迎えましたので、自分の感想を残しておきます。考察というほど考察でもなく、そして手放しですべてをほめるわけでもないのですが…
世界に輸出するミュージカルにしたい、再演を繰り返すミュージカルにしたいとのことなので、今後の期待を込めて。

書き忘れた!ということがありそうなので、あとからも加筆修正ある…かな?

覚書みたいな感じですが、初日雑感はこちら

ミュージカル「イザボー」初日雑感 ※ネタバレ含 - Chouette Ange

 

●見たことのないミュージカル…?
事前のあおり文句で「見たことないミュージカル!」と言われていたので、多くの人がどんなミュージカルが見られるんだろう?と期待していたところはあったかと思うのですが、実際観てみるとこれは見たことあるな…とミュオタが思うところは多々ありましたよね。
でも、サウンドイマジンを聴いたら「どこかの作品ではやったことがあったかもしれないけれど、せめて自分の作品の中ではやったことがないことを」と末満さんが仰っていたので、そこの認識の違いはあるかなと思いました。
1番ミュオタがこの作品を見て思い浮かぶところと言えば、かの有名な「エリザベート」だと思います。
そもそも、イザボーもシシィもバイエルン出身。時代によって違う、公国か王国かの違いだし、ドイツ名も「エリーザベト・フォン・バイエルン」(シシィはもうちょっと長いけど)
国王(皇太子)が見初めて結婚、子供を産む道具として扱われる、他国から嫁ぎしきたりに慣れない、子供である王太子(皇太子)と不仲、、等共通点がたくさんあるし、ストーリーテラーがいるところも似ているなあと思います。
わたしは初日観たときに望海さんシシィもできるなあとのんきに思ったのですがそりゃここまで似ているところがあればそう思うはず(笑)
似ているのはまあいいとして…ただ、一度はミュオタが見たことのあるミュージカルとどうしても比較してしまうことによって脚本の弱さが露呈してしまったところはあるのではないかと思いました。

難しい時代だから、ということで説明歌を多く盛り込んだんだと思うのですが、説明歌と心情を歌う歌のバランスをもうちょっと心情を歌う歌を多くしてほしかったなあと思います。「歴史の勉強をしているみたい」と思う人がいるのも仕方ないかなと…。
かと思えば、史実を知っている人にしかわからないエピソードもあったり。もうちょっと脚色しても良かったんじゃないかなというのがわたしの所感です。

 

●わたしの思うイザボーの軸となるところ

①イザボーのすべての行動の軸は夫であるシャルル6世への愛
これが根本にあり、狂ってしまった夫を守るためにほかの男と寝ることもいとわず、獣になることにし、まわりにどう思われようと歴史上でどのように見られようともいい、息子と対立しても嫌われても愛する夫を守るために行動した女性のお話がこのイザボーという作品だと思います。ただ、これはわたしも何度も見てこの結論に至り納得したところでもあります。(役者ファンじゃなく、1度きりしか観ない人はどう思うんだろう…?)
いかんせんふたりが仲睦まじかったころ、シャルル6世が愛妻家であったころを描かれているのが5000万リーブルの早駆けとか出会ったころの「一目見たときからわかったんだ!」くらいしかないのでもっともっと濃く描いてほしかった。
エリザでいう、「嵐も怖くない」くらいは入れてほしかったし、おそらくイザベルとジャンヌダルクを同じ役者に演じさせたかったんだろうけど、望海さんと理生さんがずっと通しで出会ったころから演じてほしかったです。ふたりならできると思うんだよなあ…。出会ったころって、14歳と16歳でしょ?いや、いけるいける!まあ出会いは今の若きの二人にさせるにしても、いきなり7年後に飛ばすんじゃなくてワンクッション順調な結婚生活だったころもいれてほしかったです…。
「獣になろう」というような歌が2曲あるので1曲カットしたら入れられるし、私的には「小さな王妃様」のくだりはいらないかなと。というか、史実を予習していないとここはわからないのでは…?わたしは知っていても、3回くらいみてようやくイザベルじゃなくて別の子だ!と気づきました。1幕で「小さかったころのわたし」って呼びかけてるから、「小さな王妃様」ってイザベルのことかと思ってたよ…私だけか…?だって一介の侍女であり、愛妾が王妃に「あなたもうめちゃくちゃよ!!」って言うかなあ…?
そしてこの「小さな王妃様」は1幕で結婚パーティを開いてお祝いをしてあげていたオデットなんだよね?(史実だと狂った王をずっと献身的に支えていた愛妾はオデット・ド・チャンプディヴェル)こちらからすると急展開すぎんか?

「小さな王妃様」の場面をいれることによって、よりイザボーとシャ6は純粋な愛だけではなく、愛しているのにイザボーにはよりシャ6が当たることへのむなしさ、憎しみ、心が軋むことでの(シャ6の狂気&愛していないほかの男へ身体を売ることでのすり減り等)イザボーの狂気を際立たせたかったのかな。

イザボーがラストに「わたしは生きたー!」って歌って生き抜くのは陛下からの「どんなに汚名を重ねても生きていてほしい」という願いを全うした結果ですよね。
シャ6が正気の時間がすごく短いので、その中でこれだけ”愛”が核になってると理解させてくれるのは望海さんと理生さんのお芝居の力量が大きいと思います。

②息子シャルル7世の変化
甲斐シャ7の冒頭とラストのイザボーへの思いの変化がかなり肝になると思います。
いや~この役かなり難しいと思う。ストーリーテラーなのに完全な傍観者というわけでもなく、ストーリーをすすめながら自分の感情も動かしていかなければならないので…。イザボーの心の中の唯一の後悔は息子との向き合い方だったのかなと思ったり…。
ラストなんやかんや感動して涙するところは本当に望海さんと甲斐くんの芝居力あってこそだと思っています。正直、ラストはふたりともいろんな感情が入り乱れているはずで、歌詞も聴いていても感情を理性では理解するところまではいかないのですが、ふたりのまっすぐにぶつかり合うお芝居と望海さんの抱きしめたくとも抱きしめられない葛藤に涙。

③イザボーがイザボーと呼ばれる所以
イザベルは女性呼称でイザボーは男性呼称なんですよね…?(フランス語よくわからないのですが、固有名詞に女性名詞・男性名詞があるのでそれ一緒で名前にもあるということなのかなと。)

でも、シャ6は愛する女性だから『イザベル』とずっと呼んでいるんですよね?
なんかあっさりフィリップが「ああ、今はイザボーと呼ばれているんだったな」と呼びだしたのには「?」となりました。しかもまだこのときは女性の役割は子を産むことだ!と詰られている段階ですよね。
ルイと共闘して最悪の王妃を選んだあとから呼ばれるようになった、とかの方が良かったんじゃないかな~と思っています。
イザボーしか見えないイザベルを出すためなのかな…。う~~~ん。

 

●演出(装置、照明、客席降り、衣装)
人力円盤型の舞台装置はいつ見てもすごかった。演出部さん総出だそうで…!本当にお疲れ様です。
あの人力装置っぽい感じが中世ヨーロッパらしさが◎
照明は2階からみるときれいだし1階だと照明の一部のような気分になります。でも確かにうるさいなという気持ちもわかる…。そしてまぶしいときもありました。でもきっと好きな人もいるんだと思う。照明さんあっぱれ!
客席降りはまあわたしコロナ禍前からそんなにすきではないので…。1階だと楽しいんだけどね。1幕と2幕冒頭の客席降りはまあいいにしても、ガウチさんソロの客席降りはいらないかな…と思います。
衣装はわたしは好き。どんどん重厚な布で濃い赤になっていくイザボーの衣装が彼女の歩んできた(歩んでいる)道を表しているようだったし、衣装の形も好きでした。男性陣もよかった!特にシャ6のお衣装はザ・王様で好きです。(すごい重いみたいですね)

 

●キャスト陣
本当にみんな大好きなキャストさんたちでその真ん中に望海さんがいることが幸せでした。
みんな本当にうまい!歌だけではなくお芝居もうまいのが今回成功した一因かと思っています。
望海さんはどのお芝居も好きだけど、やっぱり壮年期のお芝居が絶品ですよね。なんで演技だけで一回りも身体が小さく見えるんだろう…。MRのときもそうだったけども。
ハタチくらいから65歳までのひとりの女性の半生を生き抜く姿を見れてよかった。あと、シャ6へ見せる表情とほかの男へ見せる表情が全く違うことところもすごく好きです。シャ6へ見せる顔すごいかわいい…。

甲斐くんは本当にどんどんうまくなりますね。前述しましたがストーリーをすすめながら心の機敏も動かしていくのが良かったなあと。両親から愛を受けられずさみしそうな影のある役が似合うこと。(ってこれ某皇太子か!笑)

理生さんは今回で本当に好きになってしまいまして(笑)演技うますぎません?狂気と正気のふり幅と正気のときのイザベルへの愛がすごくよかったです。つぎはもっと正気な(?)役を見てみたい。スウィーニートッドもこわい風貌だったので(笑)わたしは望海さんを素直に「きれい」とか「かわいい」って言ってくれる人が好きなので、座談会読んで一気に好感度上がりました(笑)コンサートゲストたのしみ!
あっ歌ももちろんすごくよかったですよ!響きが!すごい!!

上川さんはいわゆるスペアがゆえの影とか卑屈さを隠すような軽薄さがうまいなあと…。まさに正反対の兄弟。そして本当に歌のリズム感と音程の正確さがすごい。

カズさんは今回は悪そうに見えて国のための行動がゆえというのがわかるので悪いだけではない、政治家として優秀というのがわかるおじさま。ガウチさんも国のための行動がゆえというのがよくわかる。ふたりのテーマ曲はロックなんですね。

なすりんちゃんはお芝居が本当にうまいな…。イザボーの対照的な存在として、知性が光る役どころでした。

何よりカンパニーに雰囲気がすごくよくて、仲良さそうで稽古場の様子からほっこり!マチソワ間にしてくれる男楽屋のインライもすごいおもしろい(笑)カテコの大人たちのわちゃわちゃもおもしろかったです!
MRメンバーはまた何か月後かには一緒になるし楽しみだな~!


本当にまた再演とか…あるのかな?あるとしたらまたブラッシュアップしてどんどん進化してほしいな~と思います!
たのしい舞台をありがとうございました。