Chouette Ange

観劇記と好きなひとたちについて

出会いと別れ ~宝塚における『組替え』について~

 

タイトルの通り、宝塚における『組替え』について。
特に組替え発表はされていないのに何故?という声もありそうですが、出会いと別れの季節である、この時期だからこそ。組替え直後だと、あまりにナイーブですしね。
思えば、春に組替えの発表はあまりないですね…。初夏や年末が多い印象です。

さて、ヅカオタのみなさんは組替えのイメージはどんなものがありますか?
やはり、全体的には負のイメージが強いでしょうか。
今までいた組で築きあげてきたその人自身のカラー、他のジェンヌとの関係性、自分自身が見てきた組への愛着…それらが崩れてしまうのが寂しい、という気持ちは非常に強いですよね。

でも、やっぱり宝塚で昇進していく、スター街道を上り詰めて行く、分かり易く言うと番手を上げていくとなると、組替えって必須だし、なんだかんだ言っても「組替えして良かったね」となるパターンが多いと思います。

逆に組替えをせずに番手を上げていけるのは本当にスター性を見抜かれて下級生のころから抜擢され続けているスターさんやファンが増えて爆上げされる、他の人にはない個性がある…そんなスターさんが多いのではないかなと思います。
でも、そんなスターさんはトップになる方でも一握りですし、実はそのほうが大変なことなのでは?と思うのです。(そのときの全体のバランスにもよるとは思いますが)

近年の現役ジェンヌさんだと珠城さん、紅さんが上げられるでしょうか。
明日海さんや真風さんも若くしてなられていますが、組替えされているので今回は除外ということで。おふたりとも下級生のころから抜擢され続けていた所謂『エリートタイプ』ですが。明日海さんはVISAによるものが大きいかな。*1

生え抜きトップは、見方によっては『順風満帆』と評されるタイプが多いかと思いますが、組内でのし上がるには、必ず上級生スターさんを抜かすタイミングもありますし、客入りが悪いと批判されたり揶揄されたりもしますし、苦労も多いだろうな…と思うので、一重にいいこととは思いません。

そこで今回はヅカオタ歴もうすぐ10年(!)になる私が、ここまで見てきたことを踏まえて組替えってそこまで悪いものじゃないんだよっていうお話が出来ればと思います。
近い未来に組替えがあると思うので、そのときにファンの皆さんの心の支えに少しでもなれば…と思います。

ちなみに私は現贔屓の組替えを経験していますし、初恋は彩吹さんだったので*2、それなりに宝塚人事に振り回された人間でもあります。
今はどんな人事がきても割りとすぐに受け入れ、フラットな状態で見れるようになりましたが、そうなるまではやはり自分の中で咀嚼するのに時間がかかったり、納得出来ないこともたくさんありました。
でも、やっぱり『贔屓が好き』『宝塚が好き』っていうのには勝てないんですよね…

 

それでは、早速本題へ。


①単純に注目度が上がる。

宝塚は5組もあり、それぞれ60~70人在籍しているので、全組満遍なく観劇する方もいれば、自分の贔屓がいる組だけ何回も観劇する方もいたり、応援スタイルは様々。全組詳しい方は本当に一握りです。
ですが、割合的には贔屓(or贔屓組)がいる組をリピートする層が多いと思いますし、その層が宝塚歌劇を支えていると言っても過言ではないと思っています。
そうなると、他組の生徒を知っている人って意外と少ない。3番手、4番手くらいまでは分かるけど、新公主演・ヒロインは名前だけで実力などはわからない、とか。
そうなると、組替えしただけで「どんな子だろう?」「○組から組替えしてきた子ね!」「意外と上手なのね!」と覚えてもらえる。
私は割りと覚えるのが早いので(唯一の特技…)、その組も路線・別格スターさんや若手で推されている子はそこそこの観劇数とツイッター等の情報から覚えているのですが、意外とそういう人って少ないもんです。

それを顕著に感じたのは、真彩希帆さん(以下、真彩ちゃん)有沙瞳さん(以下、みほちゃん)の組替え。
まあやちゃんは花組星組のとき、それまで花組ばかり見ていた私は当然のようにまあやちゃんの歌の上手さや可愛さ、将来の有望さを知っていたし*3、ヒロインも出来る子と思っていましたが、意外にも他の組のファンの方には知られていなく、良く知っていたのは花組ファンだけだったのかとそのときに思いました。

みほちゃんの場合は雪組では新公・バウとヒロインをこなしていたし、小劇場の2番手娘役の役も鮮烈的なものが多かったので、当然のようにみんな知っているものだと思っていましたが、意外や意外、他組ファンには実力すら知られていなかったのは本当にびっくりしました。
ぐっと本公演での立ち位置が良くなったこともありますが、組替えでファンも増えたし、知名度も上がったなあと実感したのでした。

あやなちゃん(綾凰華さん)もそう感じたかな。私自身、“路線になりそうな若手男役”という認識で、組替えすると分かってから、ちゃんと知りだしたというか。
雪組ファンとしての体感です。いまではお茶会も行っちゃうくらいですから、宝塚って怖いですね…(笑)


②ファンが増えやすくなる。

①に伴って、2つの組ファン(リピートするファン)がそのスターさんを認識し、良く見るのでファンも単純に増えると思う。
望海さんも星逢で落ちたとかるろ剣で落ちたと言う人もいて、(まあ単純に2番手で一番おいしい役の時期というのもあると思いますが…)私は花組時代じゃないと落ちなかっただろうなと思うので、やっぱり組替えで得たものは大きいんだなと。

組というのは、生徒さんにとっては『ホーム』ですから、その『ホーム』が組替えした分だけ増えるというのは強みなんだろうなと。
ヅカオタって贔屓のいる組の子たちはみんな親戚みたいな感覚で見る方が多いと思うんですよね(笑)単純に味方が倍になるなと感じます。
例えば、贔屓組から組替えして頻繁には見なくなってしまっても、観劇するときは「ああ頑張ってるなあ。輝いてるなあ!」とにこにこしながら、追ってしまうと言うか。
私だと月城かなとさんとかは顕著で、月組見るときに必ず追うひとりですし、活躍している姿を見たり、月組ファンの方にほめられていたりすると『雪組で育ったんだぞ!』となぜか私が誇らしい気持ちに(笑)みほちゃんも同様に。


③殻を破って新しい自分に出会いやすい。

これはジェンヌさん自身が言っている事と、私自身が組替えされたスターさんを見ていて。
まあこれは、私が望海さんが贔屓で一番見ているからというのもあるけれど、本当に顕著に感じました。がっちがちに『花男とは』という枠に固まっていたところ(それが悪いことではなく、望海さんは真面目だから余計に)を自由で自然体な当時トップスターだった早霧さんやナチュラルな雪組生にほぐされて…今は気を許せ信頼できる仲間に囲まれて凄く楽しそう。
みほちゃんも雪組では実力が先行されるが故に、難しい役(悪女や当て馬)を当てられていましたが、星組では幸せそうな可憐な娘役らしい役も当てられ『ヒロインもできるんだ』と思ってもらえるきっかけになったと思います。


④個性を発揮しやすい、そして組に新たな風を吹かせる。

③に少し伴いますが…組によって、やはり個性は変わります。
その個性を武器に出来るのが組替えだと思うんです。
望海さんの場合、花男としての魅せ方』雪組では武器になりました。※これは本人も語っています。
まあ私はずっと望海さんを見てきたので、当たり前の部分だったから雪組からもらった新たな風の方が強く感じたのですが。
ここ数年はずっと雪組を見ていたので、組替えしてきた人たちを見ると強く感じますね。
あやなちゃんの星組時代に見に付けた押し出しの強さやギラギラ感(しかも本人は可愛い系というか、素はふわふわしてるというギャップ!)は、雪組ではないもので魅力的ですし、ひらめちゃん(朝月希和さん)やまあやちゃんの花娘として鍛え上げられた基礎はスカート捌きやヘアアレンジにも出ていて、一線を画しているなあと思います。
勿論、雪娘たちのヘアアレンジもスカート捌きもすばらしいですが、それ以上に彼女たちは着物の着こなしがすばらしいですよね。あと、みほちゃんを見て感じたのは輪っかドレスの着こなしでしょうか。(全然すそ?が動かない)

この個性や新しい風は少なからず、在籍している生徒にも刺激を与えるでしょうし、風が吹かない環境はあまり良くないですからこの『風』も組替えの一つの狙いなのかなと思います。


⑤組替えするということは劇団内で名前が上がっている人だということ。

どの組織でもそうだと思いますが、何かに秀でている人・自然に目を惹く人・躍進していく人は目立つし、会話のなかでも自然と名前が上がります。
それは宝塚の劇団内でも同じことじゃないかなあと。
名前が上がらないよりは上がったほうが絶対いい。目立ってなんぼの世界ですから。

上記で述べた通り、新しい風を吹かせることが出来るから、組替えさせていると思うんです。
ただ単に実力があるだけとかではなく、『華』があるだとか、なぜかどこにいても目を惹く不思議な存在だとか、クセが強いとか……必ず魅力があってのこと。

もしかしたら、生え抜きスターを上げたいための組替え等もあるかもしれません。でも、名前が上がって組替えするだけで、メリットは多くあると思います。(上記を見て頂けたら…)


⑥組替え=組の個性が消える、というわけではないということ。

主要スターが組替えしてきた方が多いと『○○組じゃない』と言われることがあります。
私自身、割り切れなくてそう思っていたときがありました。
でも、ここまでの①~⑤まで見て頂いて分かるように、私はそうは思いません。
というか、たまたまそれぞれ最初に配属された組よりもしかしたら、他の組のほうが個性に合う場合もあるのではないかな~と思います。

ずっと見てきた、早霧さん体制の雪組。まずトリデンテは組替え組だし別格スターも組替えを経ていた方もいました。お披露目のポスターは7人中4人は組替え組でした。(半分以上!)
でも、私はこの体制が『雪組じゃない』なんて思えませんでした。日本物をたくさん上演していたし、雰囲気もわたしの好きな雪組のままでした。(上手く伝えられませんが…)

 

前述した『風』にも通じるのですが、『流水腐らず』という言葉があるように、停滞せず常に活発に動き続けるところには、沈滞や腐敗はありません。
組替えはそんな動きをより活発にしてくれる、健全なものにしてくれるものなのではないかと私は思っています。
今では、私の贔屓が、応援している子が、そんな役目になってくれることや抜擢されることが凄く嬉しいことだと感じます。


最後に。
大前提として、わたしは組替えは栄転であるべき、と思っています。

最低限、路線に乗らなくても活躍の場が広がる組替えであって欲しいと思っています。
色々メリットを述べましたが、環境が変わり、注目(お客さんからも同じ生徒からも)されるということは、少なからずプレッシャーがかかりストレスになり、負担がかかります。
そのため、あまりにも不明瞭な組替えは反対です。そして出来れば、組替えが重なることも避けて欲しいなとは思います。

 

昨年、組替えが発表された生徒さんたちは、ようやく活躍され始めたところです。
わたしは昨年の組替えで納得できたのは最初はあやなちゃんのみで他は不可解でした。
キキちゃんは勿論新生宙組を支える大事な戦力となっていますし、活躍されていますし、キキちゃんの魅力がまた多くの人に知られたのは本当に良いことだとは思いますが、冷静に考え花組の方が早くトップになりそう(あくまで「そう」)なのに、3番手スター*4がいる宙組へ行く事は最善だったのか…私にはまだ分かりません。
華雪りらちゃん、桜庭舞ちゃん、天彩峰里ちゃんの組替えが最善だったのかもまだ分かりません。(せめて、新公ヒロインはりらちゃんか舞ちゃんにすべきだったと思っています。星蘭ちゃんは好きだけど、一回やっとるやん…?)

組替えしたみんなが幸多からんことを願っています。

 

近い未来…また初夏のころには組替えはあるでしょう。
そして、また色んな意見や感情が出ると思います。

 

それでも栄転で活躍の場が広がる、新しい風が吹くものとなるように願うしかありません。

 

 

*1:歴代VISAのイメージキャラクターは音月さん以外は花組のトップスターでした。

*2:トップになるためのカードを殆ど揃えた状態、正二番手での退団は極めて異例です。正二番手=トップを約束された状態、だと私は思っています。

*3:当時研3で既に2番手・3番手スターの明日海りお、望海風斗とデュエット経験があるというスゴツヨ新進若手娘役だった

*4:生え抜き宙組スターの愛月ひかるさん。